「横浜骨董ワールド骨董縁起帳」

アンティークに薀蓄を傾けながらワクワクのホリデーシーズンを楽しんじゃいましょ!


美しい秋が楽しく通り過ぎ、賑やかで幸せな冬がやって来ました。年に2回の骨董ワールドは私の楽しみ!いろいろな種類のクラスやイベントをさせて頂いている大忙しケイティーが時間を捻出して出かける英国アンティーク買い付けも年に2回。骨董ワールドの少し前に帰国して、待ちに待った3日間の出店になります。普段ご一緒している皆さんはもとより、この年2回のイベントを指折り数えていらして下さる遠方の生徒さんやお客様との時間も期待いっぱいです。私だって足の指まで動員して指折り数え、望む3日間なのですよ。

トータルライフコーディネーター、フラワーデザイナー、料理家である私にとって、毎日の暮らしを自分で作り、ステキに輝かせ、おしゃれなライフスタイルをご提案するのが仕事です。でも本当のライフワークであり、自分自身の考え方や暮らし方のベースとなっているのはアンティークという深く、趣があり、不思議な世界なのです。新しいものにはないアンティークの落ち着きや年月を重ねた物だけに滲み出る気品や優しさ、そして重厚感はそれに触れたものを夢中にして離しません。そんな少々スピリチュアルな感覚を通し、時代を超えてやってきた物たちを使い、日々の暮らしを彩り、紡いでいくってステキでしょ!季節感のあるインテリアを心がけ、メリハリのある毎日を送り、花を飾り、旬の食材を使ったお料理を作り、健康で元気一杯の自分や家族をサポートするのは素晴らしい事です。このような「生活の流儀」が自然と一本、筋を通っているのが英国!そして英国に暮らす人たちなのです。

英国アンティークには沢山の決まりごとやストーリーがあります。特に英国シルバー製品に付けられている「ホールマーク」には動かぬ証が込められています。 さて、シルバー製品の品質保証マークを付ける際に使われる刻印って何でしょう?英国のシルバー製品は、中世から、その品質を誇っていますが、その理由は国単位で厳格な品質管理が行われ、厳正な審査にのっとった品質保証マークである「ホールマーク」が各製品に刻印されてきたからなのです。さすが伝統と上質を重んじるお国柄です。

厳格な分析・鑑定を行い、ホールマークを刻印することのできる機関は、アセイ(試金)・オフィスと呼ばれ、在英国内に4つあり、(1)ロンドン・オフィス、(2)エディンバラ・オフィス、(3)バーミンガム・オフィス、(4)シェフィールド・オフィスとなります。このアセイ・オフィスによる刻印はホールマークと呼ばれ、基本的に下記のような形で並んでいます。これらのホールマークの組み合わせで、いつ、どこのメーカーが作った製品か、そしてその品質までがはっきりと分かるという仕組みなのです。



1.メーカーズマーク 生産者のマーク。アルファベットイニシャル。 2.スタンダード・マーク シルバー含有率92.5%を超える「英国品質」を保証するライオンマーク。 3.メタル & ファインネスマーク シルバーの純度を表すマーク。 800 純度80% 925 純度92.5% スターリング・シルバー 958 純度95.84% ブリタニア・シルバー 999 純度99.9% 純銀 4.アセイオフィスマーク どこのアセイオフィスでホールマークが押されたか分かります。

 

*Sheffield は王冠マークでしたが、1975年からバラマークになりました 5.デート・レター アルファベットと枠の組み合わせ。大文字だったり小文字だったり、ブロック体だったり飾り文字だったりと、様々なデザインで表される文字を、これまた様々な枠の形と組み合わせ、何年に刻印が押されたかを示す仕組みです。 *ロンドン以外のオフィスでは、1999年以降はこの刻印付けが省略されました。

シルバー製品の基本的なお手入れはどんな風にしましょう!?「シルバー」と聞くだけで「黒くなるから、手入れが出来ないから」とあきらめてしまう方が多いですが、銀製品は普段使いの出来る、身近なものなのです。使う毎に良く洗って水分をふき取って下さい。特に卵やマヨネーズなどの食事に使った折には硫黄によって変色しやすいのですぐに洗って、水分をふき取っておくのが大事です。そして時々、シルバー専用の研磨剤、クリームで磨きましょう。シルバーの輝きがよみがえり、とても充実した、嬉しい気持ちにさせてくれます。

シルバー製品と並び、紅茶好き、アンティーク好きの皆さんに外せないのがブルーウィローです。この絵柄は18世紀末に英国の陶工、トーマス・ターナーが作り上げたものと言われ、そのオリエンタルで美しいデザインには物語があるのです。(由来はスタッフォードシャーに伝わる古い歌と言われています)

ブルーウィローに籠められたストーリーはLeslie Bockol著の「WILLOW WARE」という本に以下のように載っています。     むかしむかしの中国でのお話。時の皇帝に仕える税関吏長がいました。広い敷地に建てられた豪華なお屋敷(絵柄の中央よりやや右方向にある中国風の建物)に住み、庭には柳(絵柄中央。これゆえにウイローパターンと呼ばれています)や果樹がありました。この税関吏長の秘書官にチャンという有能な青年がいたのですが、彼の一人娘、クーン・セと恋に落ちてしまいました。 2人の間には身分の違いという大きな障害がありましたし、当時の中国では若い男女の勝手な結婚など許されず、2人は危険な逢瀬を続けていたのですが、あるとき逢引が父親の知る所になってしまいました。激怒した父親はチャンを追放し、娘を敷地内にある館(絵柄の柳の右上)に幽閉し、庭には塀(絵柄の前面)をめぐらせてしまいました。そして、父親は娘の気持ちを無視し、年の離れたター・ジンというという権力者と政略結婚の話を進めていきます。

やがて、結納の日がやってきて、宴席は盛り上がっていたところ、チャンがそこに紛れ込み、クーン・セの手を取って逃げ出しました。庭を走る娘の姿を見て父親は慌て、橋を渡り、追いかけますが、酒に酔っていた為に思うようにいきません。(絵柄の橋の上の3人のうち、左がチャン、真中がクーン・セ、そのうしろが父親)。なんとか2人は父親から逃れ、駆け落ちは成功。しばらくの間、クーン・セの侍女の家(絵柄の橋を渡ったところにある家)に隠れ、やがて新生活を求め、船(絵柄の水上に浮かぶ船)で離れ小島へと向かうのです。  島に逃れたチャンとクーン・セは2人で家(絵柄の左上の小島にある家)を建て幸せに暮らしていたのですが、婚約者に逃げられたター・ジンは軍隊を率いて2人を追い詰めるのでした。チャンは島民の助けを得て、彼と戦ったのですが、負けてしまい、帰らぬ人となりました。クーン・セは絶望のうちに家に火を放ち、炎の中に。愛を貫き、消えて行ったチャンとクーン・セの魂は2羽の小鳥に姿を変え、この世の永遠なる愛の象徴として天空を舞いつづけるのでした...さすがイギリス人の考え出したお話!ロミオとジュリエットのシノワズリ版という感じですが東洋への憧れと古臭いながらも叙情的なストーリーがいいですね。